例会の報告

ひがき乳腺クリニック　院長 檜垣 健二　様

女性のがんの中で、乳がんの罹患数は一位ですが、死亡数は四位です。最近では４５から５４歳の年齢階級での罹患率は上昇傾向にありますが、４０から５４歳の年齢階級での死亡率は減少傾向にあります。ただし、高齢者の死亡率が上昇しているので注意が必要です。 

今回は、乳がん診療の最新の話題をいくつか紹介したいと思います。まずは検診ですが、従来の「自己触診」の用語は「検診行為」と位置付けられ、煩雑で習得が難しく、正確性、継続性等、実効性が疑問視されてきたので、最近では、「ブレストアウエアネス」すなわち、普段の自分の乳房の状態をよく知っておくことにより、変化に早く気が付くようにする健康教育の啓発が進められています。そして、これはマンモグラフィ検診の対象とならない３０代以下の女性にも役立ちます。実際、３０代の乳がんも珍しくはありません。 

また、全乳がんの5-10％を占めると言われている遺伝性乳がんもBRCA1・2という血液検査で診断が可能となました。もし、この検査で病的バリアントが認められたならば、乳がんや卵巣がんの発症のリスクが高いと言われていますので、その結果によりその後の方針も決められています。 

乳癌の治療の主役となる薬物療法も、その種類が充実してきました。化学療法、ホルモン療法、分子標的療法のほかに、免疫療法やCDK4/6阻害剤やPARP阻害剤も加わりました。使える薬は、この１５年間で２１種類から３１種類に増えました。そして、いままでの薬も適応拡大がされつつあるだけでなく、期待できそうな新薬も開発中です。　　 

そして、最後は、乳がんを切らずに治す夢のような治療のお話です。早期に発見されれば、ラジオ波焼灼術も可能となりつつあります。これらの内容を紹介していきたいと思います。