例会の報告

広島市郷土資料館　学芸員　本田美和子様

毛利輝元による広島築城とともに建設が進められた城下町。現在の広島市中心部の基礎となっています。西は己斐川（現在の太田川放水路）、東は岩鼻（現在は消滅・東区矢賀）、北は白島北端、南は海岸線（干拓によって変動）をその範囲としていました。

城下町建設当初、まず行われたのは「町割」でした。町割とは縦横直行する街路で土地を区画することです。これが終わるとできた区画に家屋が計画的に配置され、道を挟んだ両側が原則として１つの町とされました。

城下中心部には侍とその家族・町人が居住していましたが、彼らの居住地域は分けられていました。現在残されている城下由来の町名としては、紙屋町・猫屋町・鉄砲町・幟町などがありますが、前者２つは町人町、後者２つは侍町の名前です。毛利時代、町人の居住地域は城の南側、当時の水運の動脈であった本川・元安川河岸一帯に限られていましたが、その後に城主になった福島正則の時代以降、町を東西に貫く西国街道沿いにも広がりました。江戸時代、広島城下で最も繁華だった場所は、現在の本通商店街の筋と、平和記念公園がある場所（当時中島本町）でした。

一方、農民は原則として町には居住できませんでしたが、城下の南に干拓によって広がった新開地が主に耕作地として利用されたため、新開地やその近辺には農民が居住していました。新開地では主に綿花の栽培がおこなわれていました。

広島城下が太田川デルタ上に築かれた関係で、その沿岸部には常に土砂が堆積し、浅瀬が広がっていました。その浅瀬を利用して海苔・牡蠣の養殖が盛んに行われる一方、干拓が繰り返し行われ、海に向かって土地が拡大しました。この干拓のために築かれた堤防は干拓が繰り返されると内地の土手道になりました。その殆どは削られて高低差はなくなりましたが、今も道として残されています。そうした道には、曲線的である・道の方向が周りと比べて不自然である・道の接合が悪いなどの特徴があります。また、現在も高低差が残されている道もあり、かつての広島の情景を伝えています。